北杜市は農業が盛んな地域の為、農地が数多く存在します。
農地は眺めの良い場所も多く、こんな場所に家を建てられたら良いなと思う方も沢山いらっしゃるかと思います。
ですが農地の売買は一般的な土地取引とは異なる点が多いです。
農地売買が難しい、ハードルが高いと言われる理由を簡単にご説明します。
農地の売却が難しい理由
①農地法
農地を維持することは、国民の食生活に直結する。そのため、農地は法律によってほかの用途に用いられないように厳しく規制されています。
農地を売却するには、まず農地法に基づいて許可を得る必要があります。
その許可権者は地目を農地(田、畑など)のまま売却するなら農業委員会、農地以外に転用して売却するなら都道府県知事(申請先は農業委員会)となります。
※農業委員会とは各市町村に設置された農地法に基づく権利移動の許可や事務を担う組織。
農地のまま売却をするなら、購入できるのは農業委員会の許可を受けた農家または農業従事者に限られます。
したがって「週末だけ農業をしたい」といった人には売却できません。農家が減少している状況下で大きなハードルとなります。
②農地区分
では、農地以外に転用して売却すればスムーズに売却ができるのでしょうか。
更地にして宅地や駐車場用地とすれば、買い手も見つかりやすいかもしれません。しかしこの場合も、転用後のしっかりした事業計画がなければ許可が下りません。また、そもそも農地の区分よっては転用許可が下りないこともあります。
農地は以下の5つに区分けされています。
●農用地区域内用地
市区町村が定める農業振興地域整備計画で農用地区域と指定された農地。転用は原則不許可。
●甲種農地
市街地調整区域内で特に良好な営農条件を備えている農地。転用は原則不許可。
●第1種農地
営農条件が良好で、集団的(おおむね10ヘクタール以上)の農地。転用は原則不許可だが、公共性の高い事業に転用する場合等は許可。
●第2種農地
鉄道駅が500メートル以内にあり、今後は発展が見込まれる生産性の低い農地。転用は周辺に当該事業を実現できる農地以外の土地や第3種農地があれば不許可。
●第3種農地
鉄道駅が300メートル以内にあり、都市化が著しいと見られる地域の農地。転用は原則許可。
農地法の許可について
農地法の許可には、農地法に記載されている条文によって「3条許可」、「4条許可」、「5条許可」があります。
・3条許可:農地を農地として利用するために他人に売買、贈与、賃貸借等する場合
・4条許可:自分の所有する農地を自分で使うために農地以外に転用する場合
例)農地⇒宅地等:自己住宅,貸住宅,道路,駐車場,植林または自己の事業に必要な資材置場等に使用する場合
・5条許可:農地を他人が農地以外として利用するために売買、贈与、賃貸借等する場合(転用+売買等)
3条と4条・5条は農地を農地以外として利用(転用)するかしないによって許可内容・許可権者が異なります。
☆農地法第3条
例えば農業を行なうために、農地のまま購入、あるいは賃借する場合に、農地法第3条の許可が必要となります。
農業を行なうために、農地を購入、あるいは貸借する場合には、原則として農業委員会の許可が必要です。
※農地法第4条、及び第5条の許可権者は都道府県知事等であり、許可権者が他の場合と異なるので注意が必要となります。
農地法第3条の許可を要するもの:売買、贈与、貸し借り、競(公)売、特定遺贈等
農地法第3条の許可を要しないもの:相続、時効取得、包括遺贈等の場合
☆農地転用許可制度(農地法第4条・5条)
農地法では、農地の農業上の利用と農業以外の土地利用との調整を図りつつ、優良農地を確保するために、農地の転用にあたっては、県知事の許可(市街化区域にあっては農業委員会への届出)を要する「農地転用許可制度」を定めています。
第4条
許可申請者:転用を行う者(農地所有者)
許可権者:都道府県知事
※ただし農地の面積が4haを超える場合には農林水産大臣との協議を要する。
許可が必要な場合:農地の所有者が農地を転用する場合
第5条
許可申請者:譲渡人(農地所有者)と譲受人(転用事業者)
許可権者:都道府県知事
※ただし農地の面積が4haを超える場合には農林水産大臣との協議を要する。
許可が必要な場合:農地、採草放牧地を転用するため権利設定または権利移転を行う場合
いずれも許可不要の場合:国、都道府県が転用する場合や市町村が土地収用法対象事業のために転用する場合
農地売却の流れ
上記のハードルをクリアしていけば農地の売却は可能です。その後の流れは次のようになります。
●地目が農地のまま売却する場合
1. 購入者を探す
知人や農協などに紹介を依頼するといった方法で購入者を探す。
2. 売買契約を締結する
契約の際は、「農業委員会の許可が下りなければ契約解除」という条件を必ず入れる。
3. 農業委員会に許可申請をする
提出書類は委員会によって異なるので、各自治体のホームページなどで確認しておく。
4. 農業委員会から許可通知が届く
5. 購入者へ農地を引き渡す
このときに代金を受け取り、所有権移転登記を行う。
●地目を転用して売却する場合
1. 農地区分を確認する
自分の農地がどの区分なのか、農業委員会や市区町村の担当課に問い合わせて確認する。
2. 購入者を探す
方法としては知人からの紹介のほか、農地売買の経験が豊富な不動産会社へ依頼するといったことが考えられる。
3. 売買契約を締結
この際、農地のまま売却する場合と同様に「農業委員会の許可が下りなければ契約解除」という条件を必ず入れる。
4. 農業委員会に転用許可の申請を行う
許可権者は都道府県知事だが、申請先は農業委員会。
5. 都道府県知事から許可通知が届く
6. 購入者へ農地を引き渡す
このときに代金を受け取り、所有権移転登記を行う。